キャリア支援課の職員が学生と面談や模擬面接を行う場合、学生のほうから切れ目なく語り続けてくれるということは極々まれで、たいていの場合は「職員の質問→学生の返し→職員の質問→学生の返し→(以下繰り返し)」という流れになっていきます。
しかしこの時、「なぜ○○したのか?」「その時何をしたのか?」「どうやって○○したのか?」などの質問を真正面からぶつけてみても、学生が本音を語らない(語れない)場合が往々にしてでてきます。
これは、職員と学生との間の信頼関係の問題ではなく、問いかけの仕方の問題です。
問いかけをするということは相手にものを考えさせるということなのですが、大上段から「さあ、考えろ」と言われても、人間なかなかすんなり答えを見つけ出せるわけではありません。だからこそ、キャリア支援課職員の側で、学生が本音を語りやすくなるような問いかけの仕方をしてあげる必要がでてきます。
今回は、そのための技法を2つご紹介します。
1.何も知らないので教えてほしい法
読んで字のごとく、「その○○というのを私は全然わからないのでぜひ教えて欲しいんだけど」というニュアンスを全面に押し出して質問をするという技法です。
これは、学生からエピソードや成功体験等を引き出したい時に特に有効な手法で、自分が本当に○○について知らないときはもちろんのこと、詳しく知っている時であってもしらばっくれてこの質問の仕方をしていきます。
例えば「茶道部での活動を頑張った」という学生からその詳細を引き出したいとします。真正面から「具体的にどんなことを頑張ったの?」と問いかけていっても話してもらえるとは思いますが、「私は茶道のことは正直よくわからないのだけど、具体的にどんなことを頑張るものなのか教えて欲しい」という問いかけのしかたをすると、学生がより深い話をしてくれるようになります。
人間の心理として「自分のほうが情報をたくさん持っていて、それを教えてあげる」という立場になると、自然自然に優越感や自己有用感が高まり、自然に饒舌になっていきます。
また、学生がキャリア支援課職員と接する場合、通常は学生からすると目上の人と対することになりますので、無意識的に自己防衛反応を示していくことになります。ところが、先のような問いかけのしかたをすると、一時的にではありますが上下が逆転することになりますので、自己防衛反応をすることなくコミュニケーションを取ってくれるようになり、結果として本音をどんどん語ってくれることにつながります。
非常に簡単で効果の大きい技法ですので、ぜひお試しください。
2.対極例示法
これも読んで字のごとくですが、面談をしている学生の対極にある選択肢を例として挙げることで、本人の考えをより深く聞き出していく手法です。
学生の話の中でよくあるケースとして、本人の中では当然の発想なのだけども、他人にはよくわからなかったり、本人ですらなぜそう考えたのかがわからないということがあります。このような時にこそ対極例示法は効果を発揮します。
例えば「高校生の恩師が自分にとてもよくしてくれたので自分も教師を目指すようになった」というケースを挙げてみます。
このような話に対して通常の質問をどれだけぶつけたとしても、恩師の素晴らしさを滔々と語ってくるだけで、正直埒があきません。
そこで、対極例を示して質問します。一例としては、
「その恩師に手を掛けてもらった生徒でも、恩師に感謝をしつつも全く教職を目指さない人も多数いる。なぜあなたはそれらの人とは違って教職を目指そうと思ったのか?」
という感じです。
このような問いかけを行うことで、本人の中で「(A)恩師によくしてもらった → (B)自分は教職を目指す」としか意識されていない思考プロセスを解きほぐし、(A)と(B)の間にある本人の核になるような考え方や経験を引き出していくことが可能になります。
さまざまに応用ができる手法ですので、これもぜひ試してみてください。
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