キャリア支援課職員の方の仕事は、ただ単にノウハウを教えることだけではありません。
時には面談やエントリーシート添削、模擬面接指導の中で、事実上の自己分析支援となるカウンセリングを実施し、本人の良さを引き出していくことも求められます。
筆者のような職業カウンセラーにとっては、まさしくそれこそが腕の見せ所になるわけですが、たとえキャリアカウンセラー資格を持っていないキャリア支援課職員の方であっても、一定程度の自己分析支援を実施していかなければならないのが現状だと思います。
そこで今回は、その自己分析支援をする際の視点についてご紹介させて頂きます。
自己分析支援の基本スタンスは「予断を持たない」
学生の自己分析支援をする際に、「この人は○○○力や○○性を持っているだろうか?」という視点で対応してしまうと、職員・学生の双方に特定のバイアスがかかってしまい、半強制的に結論ありきの対話を進めることになってしまいます。これでは本当の意味での自己分析には繋がりませんので、あくまでも目の前にいる学生から出てきたものが、どのような○○力や○○性という表現として表わされるものなのか?というまっさらな、予断を持たない視線で対応をしていくことが大原則です。
では、どのようにすれば学生の話を深め、自己分析の質を高めていくことができるのでしょうか?これを説明するためには、「そもそもとして採用企業は応募学生の何を知りたいと思っているのか?」について考える必要があります。
この問いに対して、キャリア支援課職員の方であれば、経団連アンケートで上位にランクされる要素であったり、社会人基礎力の12の要素を思い浮かべることでしょう。ただ、この問いへの答えを具体的な能力名として求めてしまうと、結局のところ企業や職種によって違うとしか言いようがなくなり、答えが無くなってしまいます。では何が答えなのか?
筆者が就職指導を行う際は、この解を「マインド(メンタリティ)」「ノウハウ(スキル)」として説明をしています。
経団連アンケートの項目であっても社会人基礎力であっても、つまるところこの2種類に集約することが可能(当然、個別具体的に必要なマインド等の中身は、個々の企業によります)であり、逆に言えば自己分析支援とは、目の前の学生が身につけていつつも自分自身では気付けていない「マインド(メンタリティ)」「ノウハウ(スキル)」を明らかにしていく作業だと言っても差し支えありません。
したがって、キャリア支援課職員がすべきことは、本人が自分自身の「マインド(メンタリティ)」「ノウハウ(スキル)」に気づけるようにするための問いかけに他ならないということです。
問いかけの基軸は「Why?」「How?」
それでは、「マインド(メンタリティ)」「ノウハウ(スキル)」の2点に気づけるようにする問いかけとはどのようなものなのでしょうか?
最も重要な問いかけは、「Why?」「How?」のたった2つです。
- なぜ○○と考えたのか?
- なぜ○○という行動をしたのか?
- どのように○○を行ったのか?
- どのような○○を行ったのか?
この問いかけを軸にしつつ、学生の口から出てきた話を深めていくだけで、自己分析は深まっていきます。
例えば「テニスサークルを頑張った」という学生がいると仮定します。
職員「なぜテニスサークルの活動を頑張ったの?」
学生「一緒に入ったあいつに負けたくなかったので」
職員「なぜその人に負けたくないと思ったの?」
学生「学業では正直勝てないんで、せめてテニスではあいつより上に行きたくて」
職員「負けないようにするためにどのような努力をしたの?」
学生「毎日欠かさず早朝と深夜に自主練習をして云々」
簡潔に言うとこのような流れで話を深めます。
たったこれだけの話であっても、「勝負にこだわる気持ち」「勝てる領域を探っていく思考」「目標に対して行動プランを立てて実行する力」などが見えてきます。努力の中身をもっと詳細に聞いていけば、さらに多くのノウハウが見えてくることでしょう。
このようにして本人の持つ「マインド(メンタリティ)」「ノウハウ(スキル)」を明らかにしていき、志望動機や自己PRの柱になるようなものをうまく見つけていってあげてください。
人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171) |
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