グループディスカッションの指導というのは非常に難しいですね。
なにせディスカッションですのでリアルタイムでどんどん進行していくうえ、複数の学生を見なければなりません。その結果、慣れていない方が指導する場合は「大きな声で話す」「メンバーを見て話す」「メモに集中しすぎない」などオールマイティなアドバイスしかできないことが多くなります。もちろんこれらのアドバイスが間違っているわけではありませんが、キャリア支援課職員としてはもっと有効なアドバイスをしたいと思うのが自然な流れでしょう。
ただ、実際の指導の場面では、オールマイティなアドバイスですらない、誤った内容の指導が横行している場合があります。その多くは採用選考としてのグループディスカッションの特性を理解していない講師による場合がほとんどですので、キャリア支援課職員の方にはぜひ誤った内容の指導パターンを把握頂き、効果的な講師選定ができるようにして頂けるとうれしいです。
誤り1.発言回数が多ければいい
ディスカッションである以上、発言回数がほとんどゼロでは落とされるのは当然です。
しかし、ただ発言回数が多ければいいかというと、これはやはり違います。議論に参加できていたという印象を残せる程度の発言回数があれば十分で、そこから先は回数の問題ではなく発言の質の問題になってきます。
一口にGDでの発言といっても、以下のように様々な種類があります。
人によってどのような視点での思考が得意なのかは変わってきますので、個々の学生の特性を踏まえてうえで本人が発言しやすい方向性を示してあげると良いかと思います。
- 新たな視点あるいは不足している視点の提示
- 抽象的な話を具体事例に落とし込む話
- 場が感情的になってきた場合の仲裁
- 議論が明らかに脱線してきた時の軌道修正
- 他人の意見への付け加え
- 他人の意見の問題点を指摘
など
誤り2.反論をすると落とされる
GD評価に関して、指導する側でも学生の側でも根強く考えられている誤りが、「GDでは協調性を見られているので、反論をしていくと落とされる」というものです。
もちろん、殊更にひどい表現で批判したり、意見ではなく人格を否定するような発言をしてしまっては100%不採用になります。しかし、反論すること自体は議論の質を高めていくためには必要不可欠な要素ですので、それを恐れてしまっては評価は高まりません。
要は反論のしかたに気をつければいいということですので、以下のような点を踏まえた指導をしていきましょう。
- 相手の意見の良い点・正しい点をまず示したうえで、「けれども」という繋げ方で反論を言う
- 表情や言い回しを駆使して、相手の人格を否定するつもりは一切ないという気持ちを表していく
- 場合によっては、「○○○○のように思えたのですけどいかがでしょうか?」というように、質問の形にしてへりくだった表現で伝える
誤り3.愛想良くうなずいていればいい
よく女子学生あるいは女子大学で指導する就活講師の中には、「特に発言せずとも愛想良く笑顔でうなずいていれば通過できる」と教えている方がいらっしゃいます。女性社員を「見た目の良い置き物」と考えている会社であればそれで通過出来ると思いますが、大多数の企業のGDでは、単にうなずいているだけでは通過はおぼつきません。
うなずきを指導する場合には、TPOを踏まえたうなずきバリエーションを増やせるような指導をすると効果的です。
例えば、
●序盤、アイデア出しの段階
この時点では全員が一生懸命考えている状態ですので、笑顔ではなく、真剣にものを考えているという表情でゆっくりとうなずくのが効果的です。
●中盤、ある程度打ち解けてきた段階
この段階になって初めて愛想の良い表情が活きてくることになります。うなずき方も、比較的軽く2,3回繰り返すようなやり方をすると、より気安さを示すことができます。
●終盤、意見集約・まとめの段階
この段階はグループとして一つの結論への合意形成を進めていく段階ですので、愛想の良い表情ではなく、「私も同じ考えです」と言わんばかりの表情で少し重めのうなずきをすれば、意見を言ったことと同じような意味合いを持ってきます。
このように、ディスカッションの進行状況によって適切な振る舞いというのは変化していきますので、指導の際は場合分けをしながら説明をしていってみましょう。
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